『「アトピー」勝利の方程式』 菊池新

著者は、アレルギー原因説になぜ傾倒しているのだろうか?殆どのページでアレルギー、あるいはその関連の免疫が書かれている。
もちろんアトピーの標準療法であるステロイド外用薬と保湿剤(スキンケア)についても書かれているのですが、その登場は読んでいって中頃であって、割いているのは10ページくらいです。

著者はアトピー治療として、4つをあげています。
・1つ目が『原因療法』で、こう書かれています。
『ここまでアトピーとは何か、アレルギーとは何かについて、我慢して読んできてくださった読者の方々にはもうおわかりだと思うが、アレルギーの元となる根本原因を解決することなしに、対症療法だけを継続していても、それは単なる治療の先延ばしでしかない。また対症療法だけでは、患者さんが満足できるような効果は望めない場合がほとんどである。』(p107)

・2つ目が『薬物療法』、だそうです。薬物とはステロイド外用薬のことかな?と思ったら、それは抗アレルギー薬だそうです。なぜならアトピーは『なかなか縁の切れぬ身の回りのアレルゲンに対するアレルギー反応だから』(p116)だそうです。

・3つ目が『対症療法』で、ステロイド外用薬が出てきます。炎症を止めるのにステロイドは大切だということは書かれていますが、目指すのは1つめの原因療法だそうです。『良心的な医師の治療は、アトピーに限らず、みな原因療法重視へと移行しつつある。』(p119)

・4つ目が『スキンケア』ですが、著者はアレルゲンに対してのものに重点を置いているようです。

 
一方、私がテキストとしている竹原和彦ドクターの『間違いだらけのアトピー治療』(新潮社 2005年)を見てみます。
・1つ目のアトピーの原因を見つけることは、アトピーの治療が火消しだから、火事になっている最中にその発火原因(体質)を探すようなもの、と書かれています。

私はアトピー性皮膚炎の治療を「火事の消火活動」に例えることが多いが、体質を変えて欲しいということは大火事になっている状態の家に対して、「外から火を消すよりも家に入って火事の原因を追究しないと本物の消火活動とはいえない」と主張しているようなものだ。(p29)

・2つ目の、抗アレルギー薬を用いる薬物療法ですが、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診断基準およびガイドラインには、アトピー性皮膚炎が純粋なアレルギー疾患ではないとのことです。その記述は専門的ですので引用は省きますが、竹原ドクターが要約してこう書かれています。

すなわち、かみくだいて述べるとアレルギーではない単なる刺激反応とアレルギー反応の両者が原因として併記されているのである。(p55)

そして、こうも書かれています。

しかし(2つの原因はあるものの)、アトピー性皮膚炎の皮膚におけるすべての皮膚炎をアレルギー反応と短絡的に考えるのは明らかに誤っている。(p56)

・3つめの対症療法、これはアトピーの標準療法ですが、そうは考えない患者さんとのエピソードを竹原ドクターはこう書いています。

「対象療法ではなく根本療法しか望まない」そう勘違いして、ひきこもり等人生の大事な部分を失ってきた大勢の若者の説得に当たってきた私は患者さんに最後にこのように言う。「対症療法によって人間らしい生活に戻ることこそ、真の治療だよ」(p30)

・4つめのスキンケアでは、先に上げました日本皮膚科学会の治療ガイドラインにはこうあると紹介されています。要するに、炎症を防ぐ目的ということですね。

「ステロイド外用剤あるいはタクロリムス軟膏により炎症の鎮静が充分に得られた後に、乾燥およびバリアー機能の低下を補完し、炎症の再燃を予防する目的で、ステロイドあるいはタクロリムスを含まない外用剤でのスキンケアを行う必要がある」(p128)

 
アトピーとは少し見方を変えて、この本の編集でのバランスを見てみます。
著者は1章を割いて、アトピーと似て非なるものと書き、「金属アレルギー」について述べています。私は全く知らなかったのですが、それは症状がアトピーと似ているようです。その原因の殆どは歯科での詰め物の金属で起こるそうです。
この本の目的はアトピーですので、その歯科が原因らしい金属アレルギーはおまけだと思っていたのですが、一番最後の巻末で歯科医師がなぜか金属アレルギーについてのみ書かれています。アトピーについて書かれていないのはなぜでしょう?

また、巻頭と巻末(歯科医師の推薦文の前)に、著者がやっているランニングからアトピーをマラソンに例えています。どうやらマラソンのようにゴールに着くまで頑張って下さいとのことです。巻頭では忙しい合間を縫って沖縄で、巻頭の方では1日200~300人の患者さんを診ているので体力が必要だからスポーツジムで週に1、2度ランニングをしている話が出てきます。
アトピー患者が頑張ってアレルギーを基にした原因療法をやって治るのと、ランニングでゴールをする、それが著者にはカタルシスをイメージするのでしょう。感動っぽくなっているようです。
しかし私自身の経験からですが、私は自身で治したのでやることをやっただけで、アトピーの標準療法自体は機械的というイメージで淡々としていました。

他に印象に残ったのは、著者はアレルギー原因説をとる立場から、布団と空気清浄機を勧めています。著者が開業している医院のホームページを見てみましたが、特にお勧めの商品はそこには載っていませんでした。
本では1つずつ項目を説明する形式をとっており、その際に白衣を着たお兄さんぽいドクターのイラストがあって、著者が言いたかった要点がつけられています。それが一見、親しみが持てます。

 
■本レビュー  現代書林 (2006/10/3)
この本は市立図書館で借りたのですが、寄贈を記した1枚の出版社からの紙が挟んでいました。出版社から郵送で図書館に送ったのでしょうか。私は個人寄贈は知っていましたが、出版社からというのは初めて見ました。
  
 

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