『アトピーの「かゆみ」が瞬時に消えた!』 佐藤 利夫

著者は徳島文理大学、薬品製造化学教室の教授だった方です。この本が出されたのが10年近く前ですので、現在大学のホームページで見ると在籍されていませんので、おそらく定年退職されたのでしょう。 著者は他にもプロポリスなどの健康食品に関する一般書を出されているようです。

この本のテーマは著者が研究しているキトサンという物質です。キトサンは現在、国立健康・栄養研究所によると『「コレステロールの高い方または注意している方の食生活の改善に役立ちます」などの表示が許可された特定保健用食品』あるものの、他の効用、たとえば免疫や消化器系に関するヒトでの評価の文献がなく(動物実験ではあるのかもしれません)、またこの本が売りにしている皮膚に関してはその記述さえありませんでした。

キトサンが化粧品に配合されている商品がありましたが、不溶性のために著者はその効果に疑問を持っていたようです。著者が開発したのはこの本によると、キトサン自体は水には溶けないがそれを溶けるようにしたそうです。それがアクアキトサンで、自身の所属する大学の学生にも試したところ、アトピー性皮膚炎の学生がこのように言ったとのことです。

アクアキトサンの特許を申請する準備を始めた頃、ある女子学生が、「先生、わたしアトピーなんですけれど、これつけるとかゆみが止まりますね」といったのです。(p47)

それがきっかけでアトピーのかゆみ、ひいてはアトピーへの効果を謳っているようです。ただし、著者はアトピー標準療法に欠かせないステロイド(外用薬)に関しての知識はどうなんでしょうか?

抗アレルギーの薬に用いられるステロイド剤にも、多くの副作用が知られています。
この薬の成分である副腎皮質ホルモンは、本来ならば自然に身体が分泌するものですが、薬として外部から大量に入ってくると、このホルモンが足りていると身体が判断して、副腎が分泌を止めてしまいます。その結果、最近やウイルスに対する抵抗力が弱くなって、風邪をこじらせて肺炎や敗血症を引き起こしたり、骨折しやすくなったりするので、注意が必要です。とくに子供の場合は、発育障害を起こさないように気をつけなければなりません。(p119)

著者が書いているのは、かゆみはアレルギー反応の結果であり、アクアキトサンはそのアレルギー反応を阻害するということだと思います。

でも著者が書いているのはかゆみだけであり、アトピーの炎症に関しては書いていないようです。ステロイド(外用薬)は抗炎症作用、つまり火事の火消しの役割を担っていて、私の経験では炎症が治まると痒みも同じく治まってきます。
そして著者は続いてその他の副作用もたくさん、まるで添付文書をそのまま読んでいるように私には思えてしまうのですが、その原因はステロイドが『肌から血管へ吸収されて脳に作用するためと言われています。』と書かれています。大げさすぎやしませんかね?アトピー患者は主に外用薬を使うので、副作用があっても頻度は低いはずだと思いますが薬剤的考察は書かれていません。
最後に『よくいわれるように、キトサンには副作用が見られません』と書かれています。うーん、これはまだ副作用が報告されるくらい使用例が少ないか、医薬品ではないのでそういう調査がないのではないでしょうか。いずれにせよ、これはちょっと言い切りすぎではないかなと。

著者が書いているのはアレルギー作用で、他にもその作用機序で関連する皮膚以外に胃炎にも説明がありました。理論的には正しいと思えます。その調査データや良くなったという体験談(悪くなった体験談は載っていませんでした)もあるのですが、この本が出されてから10年近く経ってアトピーの治療の主役になっていないし、医薬品になっていないところを見ると、理論的にはともかく謳っている効能が実際にはどうなのかは分からないというのが正直なところです。

 
■本レビュー  現代書林 (2000/05)
 
 

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